変形性股関節症

手術を決意するまで

2006年晩秋、京都紅葉散歩と張り切って東福寺に行ったとき、股関節が痛くなり、足が重くて前に進まなくなった。それまでにも、散歩やハイキングで長く歩いたときには、よくあったことだが、平地のお寺の境内を少し歩いただけでこんなになることはなかった。それでもいつものことだからと別に大層にも考えず、次からは山でなくても杖を持とうと決めて、ちょっと品のいい街用の杖を手に入れて、その後も予定通り京都秋の紅葉見物に精を出した。
ところが痛くなってから30年、ずっとだましだまし使ってきた股関節がついにもうだめと音を上げてしまったのか、歩きながら休憩しても、しばらく家でおとなしくしていても、痛みは治まらず、だんだんひどくなっていった。びっこを引かずに歩けない。膝をついたら立ち上がれない。手すりを持たずには階段を上れない。すぐに転ぶ。今の自分の股関節がどうなっているのか、この先どうすべきか、近くの総合病院整形外科に行ったら、臼蓋形成不全による変形性股関節症と立派な病名がついた。


関節の蓋に当たる部分の形成が不十分で関節にかかる負担が狭い場所に集中、股関節の骨盤側にある軟骨が磨り減って、大腿骨側の骨と直接すれて痛くなるとか。痛みをとるには手術以外に方法はなく、手術は自分の股関節を取って、人工股関節に置き換えるというもの。人工股関節は15年から20年もつといわれるが、それより早く痛みが戻る人もいるし、痛くなれば再手術となる。今はまったく歩けないわけではないし、何とか日常生活は送れるから、そのままで様子をみることにしたのだった。
2007年8月27日、2階から息子がどたどたと下りてきてすぐにテレビをつけてみてという。そろそろ終わりかけだったが、神の手を持つ名医とかいうタイトルの番組で、股関節手術を受けた翌日歩いている女性の姿が映った。それまでにネットでいろいろ調べたら、手術は普通2〜3ヶ月間の入院を要し、最初の3週間は仰向けに寝たまま。寝返りも打ってはいけない、なんて書いてある。それに比べてなんという違い。リハビリだって、筋肉を3週間ほうってあったあとよりは、すぐに始めたほうが効果があるに違いない。



その神の手を持つ医者というのが石部基実医師だった。それまでずいぶんネットで検索して医者や理学療法士、患者さんたちのホームページにいっていたのに、この先生のサイトには行き着かなかった。
テレビ放映当日の先生の日記には、診察予約は、4ヶ月待ちと書いてあったが、なんと、翌日には1年待ちと更新されている。全国ネットのテレビの威力はすごい。手術を受ける決心はつかないが、ピーターが大分弱ってきていたし、ちゃんと看取りたいから、1年待つくらいがちょうどいいかもしれない。とにかく診察してもらおうと予約を入れたのだった。
主にNTT東日本札幌病院で整形外科部長として手術されていたが、2008年3月に札幌市内に開業され、股関節専門医として手術件数をこなせるようになったのだろうか、9月の予定だった初診が5月に早まり、すぐに飛行機のチケットとホテルの予約をとって、その日に備えた。
診察日が5月8日に決まったと連絡をもらったのが1月だったから、飛行機は旅割という格安航空券を入手できたし、神戸空港から2時間で札幌に着くから、それほど大変という感覚はない。