2012年1月22日(日) 曇り のち 晴れ たまに 小雨
前日の天気予報でいくらかあたたかい曇りと言っているのを聞いて、よしっ、京都行きだと、京の冬の旅、第2弾、行ってきました。


東 寺・観 智 院

先ずは、東寺・観智院へ。京都駅前の一等地に広い敷地を持つ東寺。国宝寺宝あまたある東寺にあっても、観智院は別格本山と称され、いつもは非公開の塔頭のようです。
床の間と違い棚に宮本武蔵筆と伝わる水墨画「鷲の図」「竹林図」の残る武家風書院造の建物は、1605年再建だけれど、国宝の客殿です。予想していたより広い部屋で、床の間も「鷲の図」も大きいものでした。武蔵を敵と狙う一派から逃げて、ここで3年間隠れ住んだそうで、そのときに描いた図だといいます。
左の築山は日本をあらわすという五大の庭
神亀、シャチをしめす石組み
右上に唐の国をあらわす築山
遣唐船と龍神をあらわす石組み

客殿の前庭は弘法大師が唐からの帰り、龍神に護られて日本に帰ってこられたという故事にちなんで、全体に細かい砂利を敷いたところを海と見立て、築山を陸と見て、作庭されたとか。
本堂には、面白い仏像が5体並んでいました。五大虚空蔵菩薩像という847年入唐僧恵運が請来した唐の仏像だそうで、獅子、象、馬、孔雀、鳳凰に乗った坐像です。
隣の部屋には、愛染明王像が祀られ、昔、部屋の中で護摩を焚いたから天井も愛染明王像もすすで真っ黒です。今は、室内で護摩を焚くことはないそうです。
浜田泰助筆による「四季の図」が床の間、襖などにそれぞれ季節の名を冠されてぐるっと2つの部屋を囲んでいます。書院風茶室には見事な南天の床柱がありました。


東寺に来たらやっぱり五重塔を遠くからでも見たい


“阿じろ”で昼食

今回「みやびコース」の昼食は、立派な料亭という場所ではありませんでしたが、品数が多いだけでなく、京野菜を主にした、手を掛けて工夫された料理の数々で、満腹にもなり、舌も目も心も満足でした。 ふろふき大根、黒豆の煮凝り、そばのような細うどん、ほとんど忘れてしまいましたが、元板長さんという感じの会長さんが、いろいろ説明してくれました。いつものように椅子をお借りして、ゆっくりいただきました。楽しい昼食時間でした。


妙心寺のすぐ前の細い路地を入ったところにある“阿じろ”の玄関前は駐車のための場所になっていて彩りはありませんが、その向かい側のお家は昔から何代も続く桧皮葺などの屋根葺き職人さんで、家の前にいつもお花をきれいに咲かせておられるとか。 “阿じろ”さんのために咲かすのよとおっしゃっているそうで。お互いに古くから続くお付き合い。狭い路地を挟んでのご近所付き合いは、互いの心遣いや気働きで長続きするのでしょう。


妙心寺・玉鳳院

670年前に花園法皇がこの地にあった離宮を禅寺に改めたのが妙心寺の起こりだそうで、46ある妙心寺塔頭のなかでも由緒ある寺院として、普段は非公開。
狩野派による部屋ごとに違う画題の襖絵が囲む広い部屋部屋。見事な枯山水の庭園、言い伝えの残る古井戸、豊臣秀吉の長男・鶴松の霊屋などを見せてもらいました。
庭の南側に建つ2つの唐門のうち、ひとつを向唐門といい、正面に唐破風が見られ、もうひとつは平唐門で、開口部の左右に唐破風の屋根になっています。
勅使門などに多い唐門。平唐門というのは初めて見ました。
仏像はもちろん、室内、庭、建物、どこもみな撮影禁止で、撮った写真は、門を出てから、昔、戦乱の折に矢じりが飛んで突き刺さった痕があるという門扉だけです。右のほうの矢じり痕、分かりますか。



妙心寺・隣華院

「賤ヶ岳の七本槍」で名高いという武将・脇坂安治が創建したと伝わる塔頭。狩野永岳による「四季花鳥図」など、金地極彩色の絢爛豪華な障壁画は、まるで昨日描かれたばかりのような鮮やかさ。長谷川等伯筆の障壁画「水墨山水図」は金泥に墨一色、風格あります。
広縁の板戸の「竹虎図」も、写実性はほんものを見たことなければ無理だし、それでも雄雄しい虎2頭の姿は見ごたえあります。 ここは格式ばらず、写真も、室内は駄目だけれど庭はOKで、心安げでも、絵はどれも立派でゆっくり楽しませてもらいました。



東福寺三門

紅葉で有名な東福寺。冬枯れの楓の林は始めてみました。 白っぽい花びら状のものが沢山見えるのですが、あれは何でしょうね。
小さい花は新緑の頃だし、竹とんぼのような翼状のものをつけた種はその後、風で飛んでいくのだし。

臥雲橋から通天橋を望む
葉を落とした林越しだと建物も下の橋もよく見えます
東福寺に多い屋根を被った橋
これは入り口に近い臥雲橋

今回、東福寺特別拝観は三門のみ。龍吟庵も特別公開していますが、私たちのみやびコースには入っていません。時期によって、この東福寺三門と、東寺五重塔とが入れ替わることもあります。 東寺五重塔初層内部は極彩色の花模様や曼荼羅で覆われ、仏像もすばらしく、床下の心柱基部も見せてもらえた4年前の感動をもう一度と思いますが、一度も入ったことのないところ優先にしました。



禅寺では一番大きい三門だと言われます。一番大きいのは知恩院三門だとか。後で建てた知恩院が東福寺より幅・高さ・長さをそれぞれ1メートルほど大きくしたのですよ、とは案内嬢の言葉。この三門は、再三の焼失により今の建物はほぼ600年前の建立になるものだそうです。
どちらも大きくて立派で、大きさの差は実感できません。知恩院とも、先だって見せてもらった妙心寺とも、2階内部はよく似ています。三門としての決まりごとがいくつかあるそうです。真ん中の本尊は特に決まっていないけれど、ちなみに、東福寺はお釈迦さまです。 脇侍は本尊によって違います。他にはまわりに16羅漢を配して、天井画は飛龍と天女など。階段は屋根つきとか。
建物としての立派さと、中の仏像や梁・組み物にまで描かれた絵に、祈りをこめたご先祖たちの想いが伝わって感動します。

今回も誘ってみたつれあいは断るかと思ったら意外や一緒に来て、これだけの太い柱、大きい建物、鑿くらいしかなかった時代によく建てられるものだとひたすら感嘆していました。大きい建物のそばに立つのが初めてじゃないはずだけど、今まで関心がなかったのが懇切丁寧なガイドつきだからよく分かって興味が涌いたのでしょうね。

予報どおり、この日は底冷えは感じられず、あたたかい陽射しも時には射してきて、気持ちよく過ごせました。