
07年11月 8日〜11日
猫は高いところのほうが落ち着くようだからと、ときどき椅子から落ちたりしても、抱いて戻してやっていたが、ついに上るのも難しくなって、床にじかに座布団をおいて猫ベッドにした。その座布団の高さから降りるだけでもフローリング床はすべって立てない。ベッド横にカーペットを敷いてトイレを置いて、移動距離を短くしたけれど、わざわざトイレを通って他の場所でオシッコ。トイレ砂のお茶カテキンサンドが部屋中に散らばって散らかり放題。きれい好きさんなら我慢できないだろうな。だけど、歩こうとする間は狭いところに閉じ込めたくない。トイレットペーパーとペット消臭剤を持ってついて歩いた。夫も息子も何も言わずに私のしたいようにさせてくれて、感謝している。
亡くなる前日の朝、私の足の上で寝ていた。まぁ何ヶ月ぶりだろうねと言いながらなでたら、掛け布団がぐっしょり。夕べしっぽたたきをした後私は寝入ってしまって気がつかなかったが、敷布団もそばの座布団も。床にも水溜り。なかなか立ち上がれなくなって、オシッコの意識はあるのにトイレが間に合わないとか、トイレはいやとか。
布団を2階に持って上がるのは大変なので、外のバイクや塀の上に干して、カバーやシーツ、オシッコ消臭シートとペットカーペットを洗濯して、久々に主婦らしく朝からよく働いた。
このあと、ほとんど立ち上がることもできなくなって、缶詰餌をスプーンでつぶしてお湯で緩めて、足が踏ん張れるようにオシッコシートを一番上にのせた猫ベッドに立たせ、今までと逆に汁を絞り出す感じでスプーンを使い、斜めにした器の下のほうにスープがたまるようにして私が器を持って口元へ。これだと嫌がらずによく飲んだ。身も少しはすすった。がんばるねぇ、ピタちゃん。えらいよ。今日も布団がぐっしょりの覚悟をしていたが、9日夜からはもうまったく動けず。ついに本当の寝たきりになった。
10日の朝起きたときにすっかりからだが小さくなっていた。次男は足のむくみがなくなったじゃないかと嬉しそうに言ったが、痩せたんだよぉ。体重は1キロないのじゃないか。オシッコが出そうなときや出てしまったときに、鳴いて知らせる。きっと気持ち悪いのだろう。人間は、つらいことから逃げようという意識が働くから、多分そういうことにはすぐに慣れて分らなくなると思うが、猫は排泄に関して随分敏感なんだなぁ。
牙が口の外に出てしまっている。多分口の筋肉がゆるくなったのだろう。閉じてはいるけれど。
呼吸時のお腹の上下がゆっくり大きくなった。
からだをまったく動かさずに、ときどきクーと鳴く。鼻が乾いてきた。
水も食事もまったく受け付けず。 ときどきの鳴き声はオットセイのようなグワーグワーというにごった声で、びっくり。頭やお腹をなでると静かになるので、病院に入院させなくてよかったとつくづく思う。病院のケージの中で、他の猫や犬のにおいや鳴き声につつまれ、どんなに不安か。住み慣れた我が家で家族に見守られる最期がよかったと、きっとピーターも思っていてくれると信じている。
何度も口を掻くようなしぐさをするのは、犬歯が外に出て肌を刺して痛いのかと思っていたが、夜中、日付が変わって、ちょうど次男が台所で飲み物を作りながらのぞいたときに、からだをなでていたら、その動作を見て、歯のせいじゃないな、からだの中からきてるな、という。その後、1分ほど宙を掻くように手足を動かし、動かなくなって、息が小さくなり、呼吸につれてかすかに動いていたお腹の毛の動きが止まった。時計を見たら、午前1時47分。亡くなったのは多分45分くらいだったろう。
あっという間に頭から冷たくなってすぐに硬直が始まった。目と口を閉じてやってと頼み、ふたりで体を拭いた。姿を整えていると、もっとまるくという。そうだね。猫はまるいのが普通。心持ちまるくととのえる。
次男がのぞくのを待っていたような最期だった。よかったね。おにいちゃんにも見送ってもらえて。
あたたかいのはよくないだろうから、つけたデロンギヒーターを消し、加湿器も止めた。ホットマットは夕方から消してある。
供養というより、遠い昔は多分臭い消しだっただろう線香をたいて、いつものように横に布団を敷いて横になるが、あまり眠くない。お通夜だと思えば眠らなくてもいいやと起きていたが、4時頃少し眠くなって、ちゃんと布団をかぶって寝る。目が覚めたら6時。眠れそうにないので、すぐに起きた。
翌11日、次男が起きてきて庭に埋めようかという。何年も前に、このままもう駄目になっていくのかと覚悟したときに、できれば市役所の焼却場じゃないところで、お骨にしてもらおうと調べたことがあった。遠くまで遺骸を持ち歩きたくないし、移動車で葬式までやってくれるとかいろいろあったが、お骨にすることに抵抗はないけど、業者の言う通り、お世辞たらたらでいい格好に焼けたお骨の講釈など聞きたくないし、遠くの霊園に埋められるのも縁遠くなりそうで困る。庭や山に埋めるのは問題がないといろんな人のホームページに書いてあったから、ピーターの大好きなうちの庭に埋めてやろうと決めていたのだ。
それ以後、その話をしたことはなかったが、お互いに了解済みだったから、スムーズに進んでよかった。
後悔はない。きっとピーターも、喜んでくれただろうと思う。
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