尾 瀬 ・ 秋
草紅葉燃える

草紅葉の尾瀬ヶ原を訪れたのは、大感動の初めての尾瀬歩きの翌年のこと。尾瀬2度目です。初めはミズバショウを見たいくらいしか考えていなかったけれど、その広さ、自然度の高さともろさ、何よりも景色の美しさ、尾瀬の魅力につかまってしまいました。 是非違う季節の尾瀬を訪れたい願いがかないました。
大阪から乗ってきた大型バスから乗り換えて、鳩待峠に向かう小型バスが高度を上げカーブを曲がるたびに、まわりの山々の紅葉の景色が入れ変わり、車内はオォーと感嘆の声。最近はおばちゃんもウワァーだけじゃないの、知ってました? オォーにはちょっと驚きました。
黄色から緋色まで微妙な色合いで濃淡混じりあい、自然のままの紅葉の美しさ雄大さ。目も心も脳も、からだ中が喜びます。
前年は山歩き仲間4人でわぁわぁキャーキャーと賑やかに、楽しさうれしさ感動を分かち合えましたが、このときは、それぞれの事情があって私ひとり。
やむなく寡黙に喜ぶしかありません。

その夏、膝を痛めていて不安でした。
膝にくる下りがコースの最初で、最後にそこを登るのが50分。痛くても登りなら大丈夫。長い湿原の木道は平らと分かっていましたから、最悪、途中でリタイアも可能と参加しました。

このとき初めて杖を使いました。
かっこ悪い、邪魔、と思っていましたが、もう1本の足よと知人から勧められ、ヨッピ橋までの往復18キロ、杖を突いて歯を食いしばり、最後は涙をぽろぽろこぼして、足を引きずりながら歩きました。 杖なしで歩きとおすのは無理だったでしょう。
これは鳩待峠から大分下りた川上川の岸辺の紅葉      
途中の山の中の紅葉はこんなものではありません      
錦織の言葉がぴったりでした。

木道の行く手に林が迫って狭くなっているあたりが牛首 竜宮でお昼のおにぎり弁当

ナナカマドとササ レンゲツツジ ワレモコウ
まぁ、草紅葉のすばらしいこと。曇り日の夕日を浴びて、原も山も視界に入るすべてが真っ赤に燃えるのを目にしました。頑張って来てよかった。これでもう2度と来られなくてもいいと納得。大満足。
ところがこれで自信がついて、つらい現実からしばしの逃避と、ミズバショウの頃突然思い立って来てみたり、ニッコウキスゲに埋め尽くされるところを見たいと、やってきたり、この後も何度か訪れることになりました。


<1995年10月>



もう一度草紅葉、尾瀬ヶ原、快晴

3年後、2度目の尾瀬の秋。山や木々の紅葉には少し早かったけれど、草紅葉は期待通りのすばらしさ。鳩待峠から下って、山の鼻から木道を歩き始めてすぐ振り返ると、優美な山容、至仏山がぱぁーと目に飛び込んできます。朝の光で見る至仏が一番美しい。

快晴の空の青を映す池塘

空の青と雲を映す池塘、奥にそびえる燧ケ岳 紅葉の色見本を散らしたようなヒツジグサ

光と風の向きでしょう。行く手は火のように赤い草の海。
振り返ると普通の枯れ草原。まるで魔法のよう。
あまりにも不思議で現実ではないようで、
歩きながら何度も振り返って眺めて、

後ろの人に笑われてしまいました
ヨッピ橋、雪が降ると取り外される
<1998年10月>

何度でも季節をかえて訪れたい尾瀬。歩きたいコースはいっぱいありました。何冊も案内書や写真集を買い込んで研究し、ツアー会社に申し込んだこともありました。うまくいかず次は・・・と願望は強まりました。が、今ではどれもだめ。歩けません。11年前(1994年)に、ハイキング仲間4人みんなの都合がついて一周できたのはとてもラッキーだったのだと今にして分かります。
沼山峠から入れば、大江湿原と尾瀬沼へは今の私でも歩ける。行ったことがない大江湿原がニッコウキスゲにおおいい尽くされる光景を見てみたい。今年こそは行きたいなぁ。

関東や中部地方の人たちには、沼山峠なんて、どうってことないと思われるでしょうが、関西からバスツアーで行くのはとても少ないのです。たまにあっても、人数が集まらなかったり、ふたり以上のグループで申し込まないとだめというのです。簡単便利で安いツアーのお世話でしか動かなくなって久しく、準備のわずらわしさ、ひとりだと高くつく、に耐えられなくて、個人で行くのは考えません。大阪からがなければ仕方ない。今年の夏は、新幹線に乗ることにして、東京からのツアーを探してみようかな。高くつくけどぉーーーむぅーーー。

ビジターセンターの展示説明やそこで手にいれた冊子、買い込んだ本などから、湿原の成り立ち、現在の様子、これからどうなるか、など専門的学術的までいかない一般に分かりやすいような説明で、少しは分かったような気になっていましたが、その頃と少し考え方が違ってきているそうです。尾瀬のサイトで、そういうことが解りやすく説明されたところを探して、ふ〜ん、そうなのかぁ、と勉強になったのですが、私に解りやすかったサイトさんが、リンクに関して何も書いておられず、勝手にリンクしたくないので、興味関心のある方は、“ガイドの眼、尾瀬”などで検索なさってみてください。 尾瀬の成り立ちや地質については、群馬大学の早川由紀夫先生のサイト“早川由紀夫研究室>火山>活火山だった尾瀬の燧ケ岳”が面白い(こちらはリンクフリー)です。尾瀬全体のでき方についてや、尾瀬の動植物について詳しいサイトも、いっぱいあって、居ながらにして楽しませてもらえます。ネットの世界はありがたいです。
 

<2005年3月、記>


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