《入院、手術前日》
2002年5月28日(火) 晴れ
指定されたお昼前、次男に車で送ってもらう。外来診察室で各種手術前検査を受け、病室に案内される。部屋は南館2階。 本館の地下1階に当たる。6人部屋。海側じゃないけど本館との間の中庭に面した北側窓際でよかった。夏は日が入らなくていい。前後左右をカーテンに囲まれた真中ベッドで2〜3週間はちとつらい。
パジャマに着替えてから、持ち込んだ昼食兼おやつのパンをぱくつく。うまい!
こんなときにも食欲はある。米クロワッサン2コ、 カップケーキ1コ。ロールパンは明朝に回す。
しばらくして、検温、血圧測定。 またしばらくして右耳後ろ剃髪。前回と同じ、耳たぶの後ろを切開する手術だから。
犬との“武庫川散歩”を軽やかにユーモラスに書いたホームページを、入院前に覗いてくすくす笑っていたら、次男が、夜中に読んでないで、プリントして持って行ったらどうかと勧めてくれたのが大正解。
分厚い書籍風。筆者のyoriさん有難う。文太くん(秋田犬)ありがとう。少しの緊張がすっかり解けた。ただ案じたとおり横になっての読書は目も脳も疲れる。
手術後いつから読書欲湧くかなあ。テレビをレンタルしている人が多い。その気になったら私も借りよう。昼間はみんな静か。廊下と休憩室の見舞いの人の話し声が響くだけ。
問題は夜か。自分がガサゴソ、グーグー音立てないように気をつけなくちゃ。夕食は背の青い魚のあんかけ。セロリのピクルス入りに見えたが、キャベツの芯の酢漬けかもしれない。溶けそうに柔らかいキャベツと青菜の煮びたしがおいしかった。
家に帰ったら作ってみよう。くたくたになるまで煮てみよう。きのことわかめの味噌汁と味付のり。デザートに紙カップだけど100%オレンジゼリー。病院食はまずいという先入観は払拭された。
《手術日》
5月29日(水) 晴れ
我ながらよく寝た。何度か眠りが浅くなって、他の人の軽いいびきが聞こえるが大して気にならない。目覚めの原因がもしかして自分の寝言ではないかとむしろ気になる。
朝食が焼いていない食パンだったらイヤだなぁと、昨日の昼残したロールパンを今朝食べたが、出されたのもロールパン2個だった。マーガリンつき。冷たい牛乳、りんごヨーグルト、刻んである生のグレープフルーツ。15年前の食パン1枚に牛乳だけの朝食とはえらい違いだ。
ご時世なのか。病院が違うからか。とにかく有難い。おやつ用にロールパン残す。
ベッドの枕もとに主治医、Dr.Kaとあるのが気になる。100%信頼をおいているDr.Goじゃないのか。場数を踏んで腕を上げるのがどの世界でも当然だが、手術でそれが自分の場合となると正直不安。俎上の鯉だ。観念しよう。
手術はDr.Goだった。よかったぁ。看護婦3人くらい。2〜3度、吸引のときひどく痛い。痛ければ言ってくださいと言われているので、言えば即何かしてくれるらしく、痛みはすぐなくなる。
とにかく眠い。 睡眠剤と部分麻酔と聞いている。いびきをかいて寝ていたと病室にもどった後来てくれた次男が言っていたから、15年前と同様、今回も手術中にも寝息をたてたか?
朝、手術前の点滴用注射針を射すのがうまくいかない看護婦さん。上手な人に頼んだからと言って1時間後にやり直し。その看護婦さん、全く見えていない血管にうまく入れる。まるで神業に思える。何度射してもうまくいかなかったほうは退院するまで内出血の跡が青黒く残って、なにによらず技術は大事と改めて思わせられる。必ずしも経験とばかりはいえないのが悲しいところ。
才能の部分が大きいと思う。
最近の点滴用注射針は二重構造になっていて、1度射したらずっとそのまま何回も使える。子どものときから、左腕は血管がほとんど見えなくて、いつも右腕でやってもらうのだが、右耳の手術だから今回は右にするわけにいかなかったのだ。
前回は手術後24時間頭を動かしては駄目と言われ、トイレに行けないのがつらかった。今回は3時間動かしてはいけないが、その後は普通にというのがうれしい。
夕食、塩味のうすいおかゆがまずい。手術前何でもにがく感じていた右の味覚は何ともなくなっている。まさか、こんなことが?うれしい誤算。でもさすがに量はいけない。おかゆ少々を持参の梅干と流し込む。
がんもどきと菜っ葉の煮物はむかむかして食べられず、豆腐の味噌汁がおいしい。今日は便通なし。気にしなくてもいいと自分では思っている。多分緊張しているせいだ。
次男の後で夫も来てくれる。私がよく寝ているので先に来た夫が休憩室で待っている間に次男が来て帰ったらしい。ここは車でないと不便だから、残念がっていたらしい。
《手術翌日》
5月30日(木) うす曇り
休憩室はすばらしい。南棟だから、木の間越しに市街と海が見える。夜景がきれい。 個室はほとんど男性が入っておられる。空いている個室から見える景色は外に木がない分、 休憩室よりダイナミック。個室は1日1万円。私立病院としては安い方か。
昨夜もよく眠れた。朝いちで退院した人もいる。とても静か。誰か分からないが、6月3日に何かあると言ってそれに間に合うように退院したいとしきりに頑張っている。担当医はOKと言ったが、副院長がまだと言ったとか、看護婦さんが間に入って大変そう。
私のいる部屋は皆さんプライバシーを重んじる人たちらしく、カーテンを開けっ放しという人はいない。目の前が高い本館の建物でさえぎられ、せっかくの山が見えないなんて言っては贅沢というもの。私は広い中庭に面した窓際だからいいけど、通路側や、特に真中の人は息が詰まるだろうな。
中庭は職員と医師の駐車場らしい。毎日ゴミ収集車が来てガーガーやっているが、それほど気にならない。
桜の大木数本。花の季節には見事だろう。窓の下、生垣の緑とさわやかな風が気持ちいい。
町なかの病院は便利で、ここは毎日通うには不便だし交通費もかさむが、入院するには全くいい場所にある。
朝食はおかゆ。今日は梅干つき。味噌汁の里芋(冷凍を半分に切ってある)と人参が意外や意外おいしい。
これも帰ったらやってみよう。他に牛乳、野菜の煮物。 昼食もおかゆ。さわらの塩焼きが多少塩味がきいているからか梅干なくても食べられる。
くちゃくちゃに形がくずれた菜っ葉のおひたしがやっぱりおいしい。大好きな茄子の味噌汁。
うれしいなぁ。
身体拭き用に渡される蒸しタオルがすごい!顔拭き用1、身体用5。手で持てないほどの熱さ。気持ちいい。
着ていたパジャマを洗濯して着替え、さっぱり。この病院は週3回入浴日があってこの棟は火木土らしい。
同室者によると、広くてきれいなお風呂だそうだ。私は退院まで入浴不可。
すぐに前の手術のときと比べてしまうけれど、天国と地獄とはこのことかと思う。
前は、真冬というのに、少しお湯をもらって何度もすすぐうちに冷たくなったタオルで身体を拭いたのに。
この病院ともうひとつ、開業医の先生は検査手術先を紹介してくれるときに2つ病院名を挙げてくれて、近いからと選んだだけだったけれどここでよかった。
大部屋でもあまり気にならない。時々人の声が聞こえるくらいの方がちょうどいい加減かもしれない。
何しろ片耳では距離感も方向も分からないからどの人か分からないけど、透析の人、内科と外科とかけもちの人、外科と婦人科かけもちの人。皆さん大変みたい。
そうそう、私も大変だったみたい。こんなに沢山の耳垢、どこに入っていたのかと思うほどの量が
ビンに入れられているのを見せられた。昔、海辺の観光地でおみやげ用に売られていたサクラ貝の小ビンいっぱい!平衡感覚をつかさどる神経がむき出し状態になっているそうだ。
Dr.Goに、手術が間に合ってよかったと言われた。骨だけが問題だったのではないらしい。
だけど、今朝から私は元気元気。神経むき出しでも吐き気もめまいもしないのは余程運がいいのでは!?
家に電話してFMの聞けるラジオと洗濯ネットを頼んだら2時間しないうちに手紙と一緒に届けてくれる。ありがたや。
はがきを3人に書く。ポストは病院の門のところにあるから、パジャマで出しに行ける。
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