
《入院4日目》
5月31日(金) 晴れ
手術後の経過は順調で何の不安もない。だからだろうが、食べ物も音楽も新聞雑誌も楽しめる。
金曜日のFM<おしゃべりクラシック>を聴こうと思ったら、いつの間にか番組がなくなったようだ。残念。ドコニテ〔あれッ、どこか似ているぞ!コーナー〕は新しい番組にほぼそのまま引き継がれたようでよかった。評価が横綱、大関でなく、ホームラン、2塁打等になっているのは、司会者が渡辺徹から他の人に代わったから。ご愛嬌。
クラシックの名曲とポピュラーや唱歌、童謡、CMなど小曲の似ているところを探してリスナーがお便りするコーナーで、あっと驚くそっくりさんあり、雰囲気全然違うけどなるほど似てる!の大笑いあり、楽しめるのだ。
最近ラジオを聞いていなかったなぁ。
朝一のつもりで7:00洗濯に行ったら(本館5階)、もう3台のうち両端の2台は使用中。真中は壊れているのかと思ったら100円玉を入れる穴を間違えていたらしい。本物の穴が見えにくい位置でしかも細い。右端にきた人に聞いてやっと分かった。洗濯機100円。 乾燥機100円。パジャマと下着だけで200円。もったいないが、毎日気持ちよくなるんだから良しとしよう。
昨日通路側の人が退院して、入れ替わりに入った人が、内臓の手術の直後らしく、何の機械か、1日24時間ウーウーカタカタ賑やかな音でビックリ。ご本人は苦しそうで、音も含めて寝るどころじゃないようで気の毒。ちょうどラジオを持ってきてもらった日だから、一晩中イヤホンはめて寝た。
何度も目覚めるがいまだに家で目覚めたときの感覚で、あっ、そうかと気づくまで時間がかかる。いい加減にここは病院と分かってもいい頃やろ。それでもまだ4日目かぁ。今日は昼間眠くて眠くて眠ってばかり。
頼んでいた<やぁ、小さな仲間たち>他を持って、次男今日も来てくれる。ありがたい。マイ写真集(=新聞切り抜き)はいい。好きで切り抜いて、ただだと思うと余計に嬉しい。子どもと小動物の写真は非日常の緊張感をほぐしてくれる。入院時に持ち込んだ小鳥の巣の絵本を何度も何度も繰り返し眺める。こんな複雑な巣を誰にも教えられずに毎年作るなんて、信じられないけれど真実なのだ。不思議で楽しいことは世の中まだまだあるね。
反対側の窓際の人は明日退院。その並びのふたりは木曜から外泊。私の隣の真中の人は、6月1日退院。病室ってとても出入り激しいけど、とても静か。
《入院5日目》
6月1日(土) 晴れ
7月上旬並みの暑さとラジオで言っているが、じっとしている分には風さわやかでそうとは感じない。一粒残さず食事をいただき、どこも痛いところも気分の悪いこともない。毎日上げ膳据え膳。蒸しタオル6本。なぜか鼻○そたまらず、少しあっても白い。帰ったら家中大掃除だ!我が家は汚すぎるんだ!
家にいてもブラ○ャーなんかしていないのだから、当然パジャマの下は何もなしだが、うすくて柔らかいタオル地で、あまりにタレパ○プルプルまるうつりは外来診察室へ行くとき、大勢の人の前を通るのが恥ずかしい。いちいち脱がなくてもベッドでホックだけはずしておけるフロントフックブ○を持ってきてもらおう。
午後、窓際に入院のKさん。はがきを出しに行って留守にしていたので、後でわざわざご挨拶にみえる。私だったらどうしたかなぁ。きっとわざわざは行かないだろうなぁ。自分が入院したときのことを思い出した。初めて部屋に入るとき、同室者一人一人に呼びかけながら、
看護婦さんが○○さんですと紹介してくれたのは助かった。カーテンを開けて、寝ている人にまで自分から声をかけにくい。
母譲りの人見知り(なかなか信じてもらえないけど)の強い私にはほんとに有難かった。逆にこれから先、病院に限らず、私が紹介してあげて、ギクシャクせずにすむ場合もあるのではないかと考えた。できるかどうかはともかくとして。
夕食後大分たってから、多分7:30頃夫現れる。花籠、マドレーヌ、冷茶缶持って。小さい籠に紅花、ガーベラ、カーネーション、赤い蕾か実かいっぱいついた小枝。ツツジ風の白花、グリーンに黄色の極小花。紅花の下のまるいふくらみから直接葉っぱが出ているのが面白い。
《入院6日目》
6月2日(日) 晴れ
毎日いい天気。入院していなければ何してたかな。歩けば汗だくに決まっているけど、30℃超えてるわけじゃない。まだまだハイキング日和。六甲山、北山もいいが、奈良の山の方の寺は、 今頃いろんな花がきれいに咲いているだろうな。だけど、こんなことがなければ20日から8日間、中国四川省、黄龍、九賽溝へ行くはずだった。振込み済みの一時金3万円は返ってきたけど残念無念。
帰ったらどこへ行こうか。飛行機OKなら、夏は北海道だ。駄目なら信州へ。
朝、横になって窓の外を見ていたら、サクラの大木の向こうに白と黒の小鳥が入っていくのが見えた。つばめだ!出てくるのを待つがなかなか出てこない。しばらくして出てきたが、その後全然現れない。 カメラを持って出てみた。下のベンチにおじさんひとり。だからかなぁ。いつも誰かしら座っているんだから大して気にするとも思えないけど。つばめじゃないのかも。巣も見えないし。
今日は日曜日。ボランティアか、仕事か。若い人たちが、落ち葉の掃除。 南側のテニスコートでは下手なテニスカップル。ごめん。テレビでウィンブルドンしか見ないから……
まだ入梅ではないらしいが、キ○子おばあさんは毎年この頃から体調を崩した。いい天気の日曜日。外の人々はみんな楽しそうに見えるけど、調子の悪い人も亡くなる人もいる。ここは病院。白布を掛けられた移動用ベッドが地下から運び出されていった。
草木花鳥虫たちは、新しい命を育てるのに一生懸命。この病院は木陰にベンチ多く、外で過ごすのもいいかとも思うけど、人目にさらされると緊張しそう。
休憩室から外にカメラを向けていたら、いつも夜の担当の年配看護婦さんが、本館4階の休憩室からもっとよく景色が見えてきれいよと教えてくれたから、行ってみる。本当だった!
 |
 |
本館4階休憩室テラスから180度大パノラマ |
昼と夜、2回見に行く。通院時、バスに乗って下りていくときに見るより随分街が近くに見える。すぐ下から、阪急、JR、阪神の順に電車が通っているのが見えて、きれいに神戸から大阪までずっと市街が見渡せる。目の前の海は大阪湾。
もっと年とって自分のことができなくなったら施設のご厄介になりたいと思っているが、願わくは、こんな風に背に山を背負って前は海、なんてところがいいなぁ。いやぁ、こんな大都会でないほうがいい。家がまばらにあるような、静かな海辺の町の高台にある老人ホーム。無理かな。無理だろな。たとえそんな施設があったとしてもどんなに費用がかかるか。子どものときからそんなことを言っていたが、20回住み家が変わってもそんなところには住めなかった。かなわぬ夢というところ。
看護婦さんが教えてくれたとき、いや、ここでいい。私は木も好きだから、なんて言っちゃって、私って、やな奴だねぇ。ありがとう、行ってみるわと言えばいいものを。機会があったらさりげなく、行ってみた、 きれいだったとお礼を言おう。
|