大和路散歩・秘仏と椿
2010年3月17日(水)  くもり 後 晴れ
平城遷都1300年祭、祈りの回廊なる企画でいつもは各寺院の奥深く秘められ、1年に1日だけ開帳されているような仏像を公開してくれるというので、秘仏開帳カレンダーを作って、地図と首っ引きでぐるっと近くを見てまわれるように考えた。
その第1弾。例年より早いという椿の時期でもあり、奈良三名椿にもお目にかかれそうだし、奈良へ。東大寺開山堂は非公開なので、三名椿のひとつ糊こぼし椿(良弁椿)を今回はあきらめ、伝光寺・武士(もののふ)椿と白毫寺・五色椿を見に。近くの福智院・栄光椿も楽しみ。元気に歩けそうだったら他も行きたいがどうかな。

伝 光 寺


武士(もののふ)椿の大きな木

椿としては珍しく、花びらが1枚ずつ散って、武士に嫌がられない椿ね
案内板をクリックすると大きな画像が出ます
ここ伝光寺の本尊は釈迦如来坐像だけど、今、特別開帳されているのは、はだか地蔵として親しまれている地蔵菩薩立像。着衣なしで彫刻された地蔵尊に毎年7月に新しい衣を着せるとか。顔立ちが穏やかで衣が明るい色で品よくかわいい。秘仏というより、親しみ深い感じ。お会いできてよかったよ。こちらのご住職が写真どうぞとおっしゃるそうで、遠慮なく撮らせていただいた。


2010年3月10日〜4月4日だけ、本堂の釈迦如来坐像の前に特別に安置され公開されているそうだ。実は、この伝光寺、探すのは簡単ではなかった。平城遷都1300年記念事業協会のホームページで小川町までは分かったが、地図で見つけられなかった。同寺内のいさがわ幼稚園のほうが表通りに面していて地図に載っている。



福 智 院

3年前、頭塔をテレビ番組で見て、実物を探して行ってみてからそのいわれなどを知り、玄ムが開いたという福智院に行きたいと思っていた。
門は開いていたが、中には誰もいなくて、本堂前に、留守にしているので用のある人は本堂横の鐘をつくようにとメモがある。はい、つきました。小型だけどれっきとした鐘で、ゴ〜ンと大きな音が鳴り響いて跳び上がった。
奥の住居らしいところから女性が現れて、何か?と不思議そう。えぇ!こちらもびっくり。拝観したいと言ったら鍵を開けて本堂へ招き入れてくれた。足が悪いことにすぐに気づいて椅子を出してくれ、座って前を見てびっくり。お地蔵さん? 坐像で大きい!
高さ2.7メートルだという。その後、つぎつぎ参拝者が来て、女性が丁寧に寺や仏像などの由来を詳しく説明してくれた。

決して小さすぎる声ではないけれど、聞こえない右側後方4メートルほどのところからなので、ほとんど分からなかったのが無念。いただいたパンフレットに詳しく載っているのによれば、桧の寄木造りの上に漆を塗り重ね、その上に彩色が施されていたとされる。見た目は全体に黒っぽいが、それがもとの漆の色らしい。
光背に千体仏を背負っている地蔵像はここだけだそうだ。実際には化仏560体、光背頂上の不空成就如来と左右の六地蔵と合わせて567体とか。唐招提寺金堂の盧舎那仏坐像の光背化仏は864体あるというが、お地蔵さんに千体仏とはすごい感じ。おざなりに彫ってあるのじゃなく、一体ずつ彫り上げたのを細かくびっしり貼りつけたようだ。横から眺めるととても立体感がある。

栄光椿、木自体は小ぶりだが、花がどれも大きい、三名椿に選ばれていないけど

「南都には地蔵の霊仏あまたおはします。知足院、福智院、十輪院、市(いち)の地蔵などとりどりに霊験あらたなるを・・・・・・」(『沙石集』)とあるらしい。地蔵は六道(地獄・飢餓・畜生・阿修羅・人・天)をめぐり、衆生を救うという。<『日本の国宝058号』表紙裏の風鳶帖(ふうえんじょう)より>

このあたりのもと元興寺域内の諸寺は、中世以降、庶民による地蔵信仰厚く、
官寺としては廃れたが脈々と信仰を受け継いできたようだ


白毫寺、新薬師寺、入江泰吉写真美術館へつづく